風邪に関する漢方
今回は風邪の漢方のお話です。
中医学の風邪の治療法には、体の中に侵入してきた邪気を直接取り除く方法と、個人の抵抗力を増すことにより邪気を追い出す方法があり、前者を瀉法、後者を補法といいます。漢方の考えでは個人の体質を大きく虚実に分類し、一般的には虚証を体力の無い人、実証を体力のある人と表現されることが多いです。
実証の人には、瀉法を用いますが、その際、薬の作用に耐えられる体力が必要です。例えば体の表面に強い寒邪が襲ってきたときには、麻黄湯(まおうとう)のような強い発汗剤を使いますが、それでは汗が出すぎて消耗してしまうこともあります。多くの場合は、汗を止める作用の生薬も配合されている葛根湯(かっこんとう)の方がよいでしょう。
寒邪の強さが上記程でない場合、もう少し軽い作用の荊防敗毒散(けいぼうはいどくさん)が有効なことが多いです。熱の高い風邪では、風熱の邪気を取り去る銀翹散(ぎんぎょうさん)という薬が中国では多く使われています。(中国、特に南方では風邪で葛根湯を使うことはほとんどなく、銀翹散が頻用処方といっていいでしょう。)
虚証の人には、瀉法よりも、補法を選択します。体の内外の調和を図ることを目的とした桂枝湯(けいしとう)はその代表処方です。何回もすぐ風邪をひく人には、気を補う作用の強い補中益気湯(ほちゅうえっきとう)、玉屏風散(ぎょくへいふうさん)がよいです。
その他、嘔吐下痢症のように胃腸を襲う風邪は湿を含んだ邪気によりますが、それには藿香正気散(かっこうしょうきさん)、乾いた咳を伴う風邪には麦門冬湯(ばくもんどうとう)、薄い鼻水・咳があるときには小青龍湯(しょうせいりゅうとう)、頭痛が主症状の場合は川芎茶調散(せんきゅうちゃちょうさん)等、邪気の種類、病気の進行具合、個人の体質により処方は変わってきます。早目に状況を見極め、その人にあった処方をしていくことが大切です。
今までに出てきた処方の中には、エキス剤としては、保険収載されていないものもありますが、煎じ薬としてならどれも保険利用可能です。
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