漢方外来だより6

(3)アレルギー性鼻炎

 アレルギー性鼻炎とは、鼻腔粘膜が特定の物質(花粉、ハウスダスト等)に対して反応を起こす鼻炎をいいます。くしゃみ、鼻水、鼻づまりが3大症状で目のかゆみや充血、全身症状(食欲不振、疲れ)などを伴うこともあります。

 中医学では、この疾患を「水分代謝が悪く、体の抵抗力が弱い人がかかりやすい」ととらえています。水分代謝は水分のとりすぎや、過労、ストレスなどによって悪化し、代謝されない水が体内に残ったため、体の生理機能も影響を受けて抵抗力が弱まります。そこに花粉などの異物が侵入して引き起こされるのが西洋医学でいうアレルギー性鼻炎です。中医学では、花粉などの外的な原因だけでなく、その人の体質にも問題があるととらえています。漢方薬での治療は花粉などのアレルゲンによって引き起こされた症状を除去するだけでなく、水分代謝の改善、体質を改善し、再発の予防を目的としています。

漢方外来だより6

 表面の症状を除去することを中医学では標治といいます。アレルギー性鼻炎の際、多く用いられる標治を中心とする処方には以下の3つがあります。

 まず、薄い鼻水が大量に出て、くしゃみを繰り返すタイプには、小青龍湯(しょうせいりゅうとう)が適しています。2つめは、くしゃみ、鼻水が治まっても鼻づまりが残ってしまうタイプで、葛根湯加川芎辛湯(かっこんとうかせんきゅうしんい)が適応です。3つめは鼻水が粘り気を帯びて、膿のような鼻汁が出たり、目の痒み、充血、口の渇きなどの熱性の症状がみられるタイプで荊芥連趐湯(けいがいれんぎょうとう)などが適しています。

 水分代謝がよくなるよう体質を改善するには、中医学的な水分の生理代謝過程の考え方を理解する必要があります。水分はまず『脾』(胃腸機能を表す)の機能により、体内に取り入れたものから生成され、『肺』に運搬されます。『肺』は運ばれてきた水分を全身に輸送、また水分の流れが滞らないように調節します。最後に『腎』において、使用後の水分は尿となり排泄されます。したがって『脾』『肺』『腎』の3つの臓器の機能を整えることが、この場合は体質を改善する治療で、本治ということになります。脾気虚(下痢、軟便、食欲不振)に対しては六君子湯 (りっくんしとう)、肺気虚(息切れ、風邪をひきやすい)に対しては玉屏風散(ぎょくへいふうさん)、腎気虚(足腰の冷え、腰痛)に対しては八味丸(はちみがん)などが選択されることとなります。

 症状が強く出ているときは、標治中心となり、症状が軽くなったときに本治をすることが中医学の治則ですが、現実的には標と本の治療が同時に行われることも多いです。

参考文献:家庭の中医学(漢方薬解説)
いかに弁証論治するか「疾患別」漢方エキス剤の運用(東洋学術出版社)

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